新しい管理会計

新しい管理会計

税理士や会計士が使う一般的な管理会計

 管理会計と言えば、期初に予算を立て、期末に実績が確定すればその実績と予算とを比較してその差異(予算実績差異)を確定し、その差異を分析して次期以降の管理に役立てようというものが、一般的に広く行われている「管理会計」だろうと思います。

 そして、その予算は損益計算書ベースで作成され、実績損益計算書と比較することで、損益計算書の費目ごとに予算実績差異が把握されるというものです。

 はたして、このような一般的に広く行われている「管理会計」の実効性はいかがなものでしょうか。

 世間では、「管理会計を導入したら、業績が上がった」などというポジショントークとしか思えないような主張もあちこちで耳にしますが、おそらくそれは「管理会計を導入したから業績が上がった」のではなく、何らかの他の同時発生の原因によって業績が上がったのであって、管理会計の導入がそのような結果を導いたとは到底思えません。

 何ら根拠もなく数字だけを対象として作成された予算には、そのような力があるとは到底思えないからです。

 おそらく業績が上がった他の原因があって(社長が足繁くかよっていた顧客との取引がようやく始まったなど)、そのタイミングと管理会計導入のタイミングが同時期であったために、管理会計の導入が業績向上の原因であると錯覚してしまうのでしょう。

 そのような予算実績差異を中心とする管理会計が、世の中に広く蔓延している結果、税理士や会計士が使う一般的な管理会計の枠組みは、当然ながら、戦略論やマーケティング論とはまったく別個の独立したものとして扱われており、そこには本来管理会計が立脚するべき戦略論的なエッセンスや、マーケティングの思想などというものは織り込まれていません。

「管理」の対象は何か?

管理会計で「管理」する対象は何だろう?

 管理会計という言葉は、「管理」+「会計」という2つの言葉からできています。
そして「会計」という言葉から一般的に連想する言葉が「数字」です。
会計は数字を扱うものであると誰もが信じているということです。

 したがって、「管理会計」という言葉の「管理する」とは何を対象とするのかと言えば、まさに「数字」を管理することであるという短絡的な思い込みが生じてしまうのです。

 一方、「会計」という言葉は、所有と経営が分離した大規模な会社において、「経営の委任を受けた者(経営者)が、資金の拠出者(株主)に、委託を受けた資金の運用結果を報告し、説明する義務を全うすること」を意味します。

 しかしながら、その経営者が必ずしも適正な説明をするとは限らないために、その説明の適正性を担保するために公認会計士による法定監査というものが義務付けられているのです。

 そして委託者側からすれば、委託した資金がどれだけ増減したかが重要であって、どのような活動を行って増減したかまでは問わない、問うても経営にプロのすることは理解できないから詳細な活動の報告はいいよ、ということになります。

 したがって、説明の内容は委託した資金の増減に関する数値的な情報だけというのが原則になります。結果、公認会計士による法定監査も数字を中心とした監査ということになるのです。

 しかしながら、株式が世界に散在している大規模な公開会社を前提とするこの考え方は、一般的な中小企業にはあてはまるものでしょうか。
なぜなら、一般的な中小企業は所有と経営の分離などおこっておらず、ほとんどの中小企業の所有と経営は一致しているからです。

ならば、一般の中小企業における会計と監査とはどのように理解すればよいのか?

 所有と経営が一致していることが多い一般の中小企業においては、委託者と受託者は一致していますから、経営者が株主たる自分に説明義務を果たすということになります。
これは言い換えると、経営者が自分の行った活動の結果である数字を十分に理解することです。

 そして、中小企業の経営者は、大規模公開会社で想定されているような「経営のプロ」などでは決してありません。
泥臭く毎日毎日製造の現場で従業員と一緒に自ら汗を流しておられる工場経営者や、ほぼ毎日船に乗って魚の捕獲を行ってらっしゃる漁師さんや美味しい野菜を自分で育てて出荷してらっしゃる農家さんが経営者であることのほうが多いのが中小企業です。

 このように「経営のプロ」ではない経営者が大半を占める中小企業における「監査」は、大規模公開企業のように数字だけを中心とするものでは全く不十分なものと言わざるを得ないでしょう。

 なぜこの数字に至ったのか、どんな活動をしたからこの数字に着地したのかと、実施した活動と数字の双方をその因果関係の解釈も含めて説明して差し上げることが、中小企業における「監査」の役割なはずです。

 そして、その中小企業におけるあるべき監査を担うのが、中小企業に最も近い専門家である税理士や独立会計士などの会計専門家であるべきです。

 このように考えると、管理会計で管理するべき対象は数字だけではなく、その数字という結果を生じせしめた活動の適否までもがその対象に入ってくるということとなります。
その活動も行き当たりばったりでは事業がうまく推移することはまず不可能なので、これを事前に計画するべきなのですが、この多様な活動の連鎖という因果のロジックを戦略とよびます。(ここではM・ポーターの戦略論をベースとしています。)

 したがって、管理会計と戦略論は切っても切れない関係にあるのですが、これまでの一般的な管理会計のフレームではここで述べていることの戦略論が語られることはありませんでした。(バランス・スコア・カードでは戦略と管理会計の統合を試みていますが・・・)

 また、戦略論は極めてロジカルで因果の繋がりを重視しますから、繋がる要素は事実(ファクト)であることを強く要求します。
そこでは「ヒトの気持ち」という極めて客観化が難しくファクトとは到底呼べないものを極力排除しようとします。

しかし、ヒトの行動を生じせしめるものは「ヒトの気持ち」に他ならないのですから、活動を生み出す源泉として「ヒトの気持ち」も管理会計の枠組みに取り入れておかないと、ファクトとロジックだけではその因果のロジックは逆説的ですが極めて弱いロジックしか作れないという不都合が生じてしまうのです。

この「ヒトの気持ち」を扱って、実施するべき活動の連鎖を強くし、戦略をより有効なものとするのが「マーケティング」です。
このマーケティングもこれまでの管理会計では全く関係のないモノとして扱われてきましたが、実は管理会計には必須のものなのです。

管理会計で管理する対象は、結果としての数字だけではなく、数字を生じせしめた活動、その活動を生じせしめたヒトの気持ち(マーケティングではインサイトと言います。)にも及ぶのです。

新しい管理会計の枠組み

真に役立つ管理会計のフレームワークの姿はどのようなものだろう?

以上のように考えると、管理会計のあるべき姿が浮かび上がってきます。
それは、戦略論とマーケティング論に立脚した「新しい管理会計」です。

 管理会計は、企業の経営活動全体をコントロールします。
よく知られている言葉を遣えば、「PDCAを回す」ということです。

「P=計画(経営計画)」を策定するとは、戦略を策定すると同義ですが、戦略策定なしに単なる数値計画だけが作られているのが一般的な世間の「経営計画」です。

戦略の策定で難しいのが、様々なフレームワークをどの場面で、どのように使うか、また、どのように組み合わせて使うかです。

有名なフレームワークはほぼ全て知っていて、その各々がどのような意味を持つのかまでは詳しくご存じな会計専門家は多いのですが、いざ戦略を策定する段になると、途端にどのように使えばいいのかがわからないという難題に直面してしまいます。

難しくて使い勝手の悪い戦略の策定方法を伝授しても、実務で使えないなら全く意味がありませんよね。
できるだけシンプルに、大きな方向性だけは間違えないような戦略の策定方法があれば嬉しいと思いませんか?

そのようなシンプルだけど有効な戦略を策定できる方法論を内包したものが、僕が提唱する「新しい管理会計」なのです。

そしてその戦略の策定では、「ヒトの気持ち=インサイト」を重視します。
誰が見ても同じである客観性を担保するファクトはもちろん大事なのですが、そこばっかに注意を払うと似たりよったりの戦略になってしまって「一番になる競争」に参加することは出来ても、「独自性の競争」では負けてしまうからです。

「ヒトの気持ち=インサイト」を戦略の策定にどのように取り込むかが、この「新しい管理会計」のキモ中のキモとなります。

戦略は「選択された活動の連鎖」なのですが、どの活動を選ぶとヒト(お客様)はどんな気持ちになってどんな行動を起こすのだろう。どのような態度変容が起こってどのような行動変容を起こすのだろうという仮説が思いつかなくては戦略の策定はおぼつきません。

その仮説の精度を高めてくれるのがマーケティングという思考法なのです。
したがって、マーケティングは管理会計にはなくてはならないものと位置付けているのです。

「D=実施」の後に、「C=チェック」と「A=アクション」を実施します。
「C=チェック」は、実施している活動が予想した通りの結果に繋がっているのか(因果のロジックが企図した通りか)を確認します。

確認するツールとしてKPI管理という手法を使いますが、ここでもKPI管理する対象に「ヒトの気持ち=インサイト」を入れることも行います。

「A=アクション」では、想定通りにKPIが動かなかった時に、どのような打ち手を講ずるかを考えましょうというのが一般的な説明ですが、最終的に新しい問題を見つけてその問題の解消に向けて課題設定をするところまで含むものと考えています。

 また、全ての中小企業が戦略を策定できるとするのは誤りで、戦略を策定できないという企業も多く存在します。
そのような場合には戦略を作って独自性で競争をするということができないわけですが、そうなるとオペレーション強化という方向を選択せざるを得ません。
オペレーションを強化して戦略を作れるような強みを獲得するまでじっと我慢するということになるのです。

 そのような場合にオペレーションを強くするとはどういうことなのかという方法論も知らないと、クライアントのお役に立てないわけなので、「新しい管理会計」はオペレーションの方法論も内包した体系となっています。

戦略論とマーケティングの重要性

新しい管理会計に戦略論とマーケティングは必須。

 税理士は税務の専門家であって、戦略やマーケティングの専門家ではない。会計士は会計や監査の専門家であって戦略やマーケティングの専門家ではない。と、世間の人は見ています。

 いくら戦略論やマーケティングを学んで実務での活用に十分に耐えられるレベルにまでなったとしても、世間から皆さんを見る目は、税務の専門家、会計・監査の専門家です。

 これまで自らの職業の専門性を世の中に訴えてその有用性をアピールし、独占的な便益を国家資格というお墨付きのもとに享受してきたのは、他ならぬ税理士や会計士の先生方です。

 世の中に自分たちはこういう特別な資質を持った職能集団ですと業界をあげて長年アピールし続けた結果、「税理士とはこういうもの」、「会計士とはこういうもの」という強いカテゴリーの枠が出来上がってしまっているわけです。

 「お茶漬け」と言われたらすぐに皆さんの頭の中には「お茶漬け」が浮かんできて、「白いご飯に明太子をのっけて、熱い煎茶をかけたもの、小腹がすいた時に食べたりするけど、かきこむから消化に悪いよね。」という連想が働くでしょう。それと同じことです。

「お茶漬け」と同様に強力なカテゴリーの枠が形成されてるので、税理士や会計士が「私は戦略の策定やマーケティングを得意としております。そのあたりまで毎月カバーしてサービスを提供させて頂きますから、顧問料は通常の3倍の〇〇万円となります。」とセールスしたところで、
「え?あなたは税理士さんですよね?戦略の策定?マーケティング?え?・・・・・結構です・・・」となるのが落ちです。

 戦略の策定やマーケティングはクライアントの業績アップに欠かせないツールであることに間違いはないのですが、それを直接セールスしてしまうと世の中に染み付いた強固なカテゴリーの呪縛によってさっぱり売れないという結果になる可能性が高いわけです。

 そこで、それらを管理会計の枠組みに取り込んで、戦略論とマーケティング論と管理会計論を有機的に結合させた上で、それを「新しい管理会計」と再定義すると、「弊事務所の管理会計サービスは、他の事務所と一味も二味も違います。
なぜならば、云々かんぬん・・・・。お高いですが、おひとついかがですか?」とセールスできるわけです。


 管理会計は税理士や会計士の専門分野だと、多くの経営者の認知はすでに取れているはずなので、「管理会計」という名の下でセールスしたほうが売れる可能性は高くなり、クライアントの業績向上に早く貢献できて、結果、日本社会が良くなるスピード感が高まるのです。

 もちろん、戦略の策定やマーケティングを直接売れる時代が将来やって来るでしょうが、現状では税理士や会計士という強固なカテゴリーの枠が邪魔をするので、現状では「新しい管理会計」の枠内でセールスするべきでしょう。

思考ツールの重要性

インフラとしての思考ツールが備わっていますか?

どのような分野でもそうですが、「新しい管理会計」もこれを支える思考のインフラとして、「論理的であること」と「クリエイティブであること」の双方がとても重要になります。

戦略の策定も含めて中小企業で生じている問題の多くは、いわゆるロジカル・シンキングで対応が可能です。

しかしながら、昨今よく言われていることですが、ロジカル・シンキング一辺倒があらゆる企業に蔓延した結果、市場にはどのカテゴリーにも似たような商品やサービスばかりが並んでいます。
生活者の側からすればどうでもいいような点で差別化を図って違いを出そうをしていますが、それは全く差別化にはなっていません。

このような状況を「異質的同質性」と呼びますが、結局それもカテゴリーで1番になろうとする競争から脱却できていないわけです。

そして、本当の意味での独自性を打ち出して差別化を図ろうとすると、ある程度のジャンプした思考プロセスを経る必要があるわけで、これを世の中的にはクリエイティブ思考と呼びます。

クリエイティブ思考だなんて、そんな才能私にはないわと躊躇される会計専門家は多いのは重々承知なのですが、クリエイティブと聞くと天才的アイデアマンが一瞬のひらめきで今までにない新しいアイデアをばんばん生み出すことだと思われるかもしれませんが、そのような再現性のないクリエイティビティはここではクリエイティブ思考とは呼びません。

問題解決倶楽部では、ロジカルの延長にあって、ロジカルを形づくっている枠組みをいかに壊すか、取り換えるか、ずらすかというのがクリエイティブの本質であるという立場を取ります。

したがって、クリエイティブというものは言葉で表現が可能なものであるという立場を取りますから、言語化が可能である以上、それは聞分けて論理的であり再現性があるということになります。

このように、「新しい管理会計」では、その基礎を支える思考として、ロジカル・シンキングとクリエイティブ・シンキングの双方をとても重視します。

インフラとしての2つの思考法を重視する結果、因果関係の強い、実現可能性の高い、また、これまでにない独自性に富んだ戦略の策定が可能となり、因果の論理の視点でPDCAを早く回すことが可能となるわけです。

誰から学ぶか?

誰から学ぶかで知識の血肉化は大きく異なります。

このサイトを見に来ているあなたならば、今の自分の仕事にもどかしさを感じているのではないでしょうか。
クライアントのビジネスの相談に乗れない自分に歯がゆさを感じているのではないでしょうか。

相談に乗れない理由は簡単で、知識がないからです。
学べばいいだけの話です。
ところが、学び方が難しい。

マイケル・ポーターの競争戦略論を完璧に読み込んでも、実務では戦略を構築することはできません。

フィリップ・コトラーのマーケティング・マネジメントを読破しても、実務でマーケティングが使いこなせるようにはなりません。

その理由は2つあります。

第1の理由は、理論と実務との間にはギャップがあって、このギャップをどう埋めるのかを自分で考えないといけないからです。
ポーターやコトラーで素晴らしい理論を学んでも、その理論と実務を繋ぐ別のロジックが必要になりますが、このロジックは実務家によって千差万別で、体系的に言語化できるようなものでもありません。

第2の理由は、戦略論やマーケティングの知識を縦横無尽に使いこなせる「思考スキル」が頭の中に備わっていないからです。
戦略論やマーケティングの知識は、ビジネスの問題に遭遇した時にはアプリとして機能しますが、そのアプリを動かすOSとしての「思考スキル」がないと、問題に対する解にまでたどり着けないのです。

多くのビジネスマンがマーケティングを学んでも、実務の現場で生かせない原因は上記の2つです。

このようなことをしっかりと理解して、学ぶための方法論と、学ぶべき内容とをしっかりと把握した人に教わらないと、身に付くことがない無駄な学びで終わってしまいます。

共により良い世界を作りましょう!

ビジョンを持つ仲間が集まるすばらしさ。

あなたは、会計士や税理士という仕事が本当に世の中に役立っている素晴らしい仕事だと胸を張って世の中にアピールできますか?

私は会計士として、日本の会計専門家業界はまだまだその社会的役割期待に応えられていないと思っています。

世の中の多くの中小企業の経営者は、顕在的にせよ、潜在的にせいよ、自らの経営の巧拙をアドバイスしてくれて、今後どうするべきかについて真摯に相談できる会計専門家を望んでいることは間違いないはずです。

もし、世の中がこのような会計専門家ばかりになって、全ての中小企業のビジネス上の相談に適切に対処できる世界ができたらどうでしょう。

もっと中小企業は儲かって、会計専門家は感謝され重宝され、その対価をあげて頂く機会も増えるでしょう。
学生から、なりたい職業ナンバーワンに選ばれて、子供に就かせたい職業にも選ばれて、自分の子供にも自慢できる職業にもなりうる可能性を秘めています。

そんな世界を作りたい、会計士や税理士という会計専門家の職業を誇れるものにしたいというビジョンに共感できる先生方には、是非このカリキュラムにご参加いただいて、学んでいただきたいと思います。

単に、他の会計士や税理士と差別化するための知識を習得したいから学びたいという自分本位の方はご遠慮ください。

ビジョンを共有できる多くの会計士や税理士の先生にご参加いただいて、いろんな活動が将来できるようなコミュニティづくりを目指しています。
そのようなお仲間をお誘いの上、ご参加いただけることを主催者として期待しています。